Concept

東京国立博物館蔵 酒井抱一筆 夏秋草図屏風の写真
酒井抱一 夏秋草図屏風 東京国立博物館蔵 Image: TNM Image Archives

箔の微妙な濃淡に感じる
侘び寂び 陰翳礼賛

2015年。美しい箔足紋様を製品化するプロジェクトがスタートした。
まずは金箔で草履を作った。厚さ0.0001㎜の金箔はたちまち破れてしまい商品化はできなかった。それは実用品ではなく美術品だった。
その後金箔を直接、革にハンドメイドで貼っていく金箔革銀箔革作りに挑戦した。商品化に成功した。豪華絢爛な仕上がりとなったが、使用に応じて箔がはがれていく性質をどう評価するか意見は分かれるところだった。
そして経年変化しない箔足模様の革の制作に取り掛かった。グラビアロール捺染という技法と出会って本革に箔足模様を再現したオリジナルレザーの開発に成功した。

Story

琳派の金銀箔地の背景模様を本革に
日本的でモード感あふれるテキスタイル

金箔銀箔の趣ある風情。
屏風はほの暗い室内に光を取り入れる
調度品でもあった。
実用品であるがゆえ金箔を重ねてできた
箔足と呼ばれる部分は年月とともに風化し、
はがれ、朽ちて、経年美化の様相を呈した。
その箔足文様の美しさを
箔工芸アーティストから教えてもらった。
今は琳派の作品のモチーフより
その背景の模様が気になっている。
明治時代にガス灯が登場するまで
電気もガスもなかった。
想像してください。
暗い室内でほのかに灯るろうそくや行灯の灯り。
そして月の光や薄日を照り返して輝く金箔の荘厳さを。
陰翳礼賛。
日本人の美意識の原点のひとつかもしれない。

Craftsmanship

金箔革銀箔革とグラビアロール

本革に金箔や銀箔を手で貼っていき職人自ら箔足文様を再現していく技法の金箔革銀箔革シリーズは実用品でありながらアート作品である。
そのディフュージョンラインとしてグラビアロール捺染の製法による琳派シルバーレザーの制作に成功した。
グラビアロール捺染とはロール状の円柱に模様を刻印し、その凹凸部分に染料を流し込み素材にその模様を捺染していく技法だ。
着物業界では浴衣や手ぬぐいを制作するときの染色方法でなじみはあったが、本革にロール捺染していくアイデアは未知の世界であった。